ひとけた

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「分」・「厘」・「毛」とさかのぼっていくと
やがて「刹那」にたどりつく
それは瞬間よりも儚いきらめきなのだろう

「万」・「億」・「兆」から先には馴染みがないが
そのうち「那由他」に行き当たる
ことばだけは知っていたが途方も無く遥かな世界だ
その次には「不可思議」なんてすごいものも控えている


だけど生きてくうえで必要な単位は知れている
ものごとは簡単な数と数の間で単純に
いったりきたりを繰り返しているから
わたしはあまり深く考え込まずに
今日まで生きてこられたのだろう


たとえば 目にみえぬ痛みのひとつふたつ
こころあたりはみっつよっつ
せつない別離のいつつむっつ
落とした涙はかず知れないけど

あるいは だいすきな詩のひとつふたつ
感じるこころのみっつよっつ
大事な出逢いのいつつむっつ

あとはたくさんとか数えきれないとか
そんな表現でも差し支えない


あなたとわたしのひとつひとつ
たいせつにしたいひとつひとつ
今日もあしたもあさっても
わたしの慎ましいすてきな生活は
たぶんこのひとけただけで足りる