自分の色

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息子が図書館の3階から小走りで戻ってきた
きれいに出来て褒められたのだと
指先をむらさきやらきいろやらに染めて
娘に絵本を読み聴かせていた母親に
満面の笑顔を讃えてさしだす
和紙の染め物

ああ
そうやって見せびらかしては
小さな妹がほしがってまた喧嘩になるというのに
一寸さきの未来の自分は
彼にとってはまだ他人なのだ

つくりかたを問うてみるが
あれとかそれとかたくさんでてきて
わかるようなわからないような
とにかく色は自分でえらんだと言う

母親は
何をやらせてもうまいと上機嫌
夕べは
何をやらせても中途半端と怒鳴っていたはずだが
それには触れない


帰りは日差しが暖かく手袋もいらない
娘をうしろかごにのせた私の前方に
落ち葉を蹴散らしてゆく2台の自転車
嬉しそうな顔を互いに何度も向けている
家に着けば棚飾りの主役はかわるだろう
甘いおやつをつまみながらまた話を聞こう


――君はまだ人生の何も選んではいないが
いろんなものごとに立ちどまり
悩み迷うときがやがてくるだろう

そのときは息子よ
こうやって
自分で色を選んでゆけ
自分自身のこころの和紙を
君の色で染め上げてゆけ