Ｓへの手紙

　
あなたは覚えているでしょうか
待ち合わせ場所を聞き違えて
にどと会えなかった私のことを

想い人の国へ発ったこと
風の便りにききました　
ケイタイ電話もデジタルカメラも
まだ珍しかったあの頃の
ちょうど今日みたいな季節の変わり目に

過去に　もしも　はないけれど
もしもいまなら少なくとも
さよならくらいは言えたのでしょう
時の番人が誤差をどこかで修正して
今と同じになるのだとしても
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
あれからいくつか恋をしましたが
これだけ便利な時代になっても
歌に歌われるような恋のせつなは
ずっとかわらないもののようです
そう詩に描いたあの日から
いままでも　そしてこれからも

あなたが私の言葉を目にすることは
もうないのでしょうが
ありがとう　さようなら
どうか愛する人のとなりで
末永く幸せでいてください