花火大会(原型)

 
 
空の色を紅く映した川のほとりで
きみがつかんだ笹の舟
「失くしたものは誰かの胸に」
きみの言葉のひとつひとつを
いつも不思議に思ってた

夏の花火をいつもふたりで観に行ったね
試し打ちが夕空に鳴り響くと
はしゃぐ声がまた大きくなった

流れていく川の傾きに
ぼくはすこしも気がつかなかった
きみが花言葉に夢中のときに
ずっと水の流れを眺めていたのに

きみといた時間はとてもはやく流れたよ
いろんな事を知ったぶん無口になった僕
あのサンダルがどこに流れ着いたのか
きみなら知っているんだろう

出すあてもなく引き出しの中で眠ってた
もう色あせてしまったきみへの手紙
次の年もその次の年もそのまた次の年も
ふたりで行こうって決めたのに

夏祭りの浴衣姿のきみに
ぼくは初めての恋をした
ほんの一瞬きらめく花火より
ずっとずっときみが素敵にみえた

色とりどりの花火が夜空いっぱいに咲く
きみはもっと生きればよかった
この先ぼくがかわっていっても
きみの笑顔はあの頃のまま

夜空を見上げればいつでも
きみが微笑んでくれるような気がする
川に浮かべた笹の舟
いつかはきみにとどくだろうか

あの空のむこうにはきみがいる
ぼくの中できみは生き続ける
笹の舟にのせた手紙
どんなに時が流れても
きみの言葉のひとつひとつを
ぼくはきっとおぼえている