コトバナ2007 3Q

いちばん好きな名前

世界でいちばん好きな名前を 詩を描くノオトに書いてみた するとその字ぷるぷる震えだし ぴょこり跳ね上がって 胸の深いトコロにポチャリ ああ このせつなさは ああ このしあわせは 軽はずみな感情ではない 今までの 決して きっと

引き出しにしまいこんでた 去年の写真 去年の貝殻 思い出も足跡も のこすことなんて容易い だからこんどはたくさん集めた 今年の写真 今年の貝殻 いつかは僕も死んで 小さなぬけがらになる そして忘れられてしまうだろう ゆっくりと時間をかけて こなごなの…

海の駅

海をわたる単線列車の 踏切もない無人の駅で 君がわらってここまでくるのを 僕は去年も待っていた はじめての夏に燈した灯が 記憶の彼方にゆらゆらと そのかたちをかえてしまっても 決して想いは色褪せない あの日君にわたした切符は 何度でもここに辿り着け…

朝食

朝でかけようとして ここ数日のうちに大きくなった 玄関脇のひまわりの幼葉に目をやると あろうことか いくつか穴があいている いぶかしげに覗き込んでよく見ると 小さな小さなバッタのコドモが むしゃむしゃむしゃと葉っぱを食んでいる はやく逃がせと怒る…

夕焼け

君とみる夕焼けがいつも やがて君と行く未来に 道をつけている

対岸の君と

遠い対岸の君と ふたり同じ時刻に 波打ち際に足をつけたら 僕らはこの海でつながる

故郷の海

故郷の海に帰ってきました そこには かわらない潮の匂いがありました かわらないやさしさがありました

あたりまえの愛

線路わきを歩いていると よくみかける 姫女苑 ちいさなあかるい花つけて こんなふうに あなたこころのあちこちに あたりまえに咲いてみたい 爽やかに 何げなしに あなたの帰り道にいつも あたりまえに愛を咲かせて 待ち焦がれたい

輝きの粒

きみからキラキラこぼれる輝きの粒を すくい集めて ぼくの夜空に飾りつけよう つりあいのとれない ぼくたちを だれもみてない 夜更けのうちに ひとつぶものこさずに ぼくは きみを

遅れた恋

「出会いがもっと早かったらね」 きみのつぶやきに 数秒おくれで頷いて ありえないねと横顔でわらって この気持ちが消せないものと 確信する

あなたといる日

たいせつな一日が あなたといることで とくべつな一日となる

コトバナノタネ

もしもあなたが泣きなくなったら ここへきて あなたのかなしみを おいていきなさい ここはなみだの集積場 気のすむまで泣いて 楽になってお帰りなさい それはいつかここで 一編の詩花の種となる 時が経ちあなたが また泣きなくなったら ここにいらっしゃい …

真の想い

饒舌に語らずとも 真の想いなら届く 抱擁を急かさずとも 真の想いなら待てる 深い心の森を往かずとも 真の想いならここに

君を待っていた

この世界に生まれてきて ぼくはずっと 君を待っていたんだ だからもう二度と

Left Hand,Right Hand

ぼくと君との関係を 何かにたとえて言うならば 同じ人間の右手と左手 付かず離れず傍にいて それぞれの役割をしっかりこなして ときには一緒に 重い荷物をもちあげたり あふれる涙をうけとめたり 大きな喜びを表現したり ぼくと君との関係の これは一つの理…

せつない 想いをつめこんで これからは旅人 あなたに出会えてよかったと だれかにつたえるまでの旅

ノー・セルフ・コントロール

こんなにも広い広い世界の端っこで こんなにもちっぽけな自分の気持ちすら コントロール不能 <ドライブがいっぱいです。不要なデータを削除しますか?> [はい] 心がハードディスクなら これで万事はうまくいく 複雑怪奇な関数が返す 正規の値はいたって簡…

理解と現実

傷つく明日を待つために 生きてはいけない 頭ではわかってるのに ヒザの震えがとまらない あなた強さを分けてください

判断基準

移り気なのは 傷つくことが恐いから 正しいことなんて 何を基準にすればいいんだろう 思いを決めて放った答えは まっすぐこちらにはねかえってきて こころを右往左往する

また会う約束

もしも空がなくなってしまったら 海はどんな色になるのだろう もしもあなたがいなくなってしまったら...? その言葉をぐっとのみこむ いつもなら気にも留めない時計の針が 胸の高鳴りを刻んでいる 遠く離れてもまた巡りあおう その約束をしに ここまで来…

窓辺の少女

ここから見える景色だけですら 君がまだ触れずにいるものが無数にある 君はじっと目を凝らして なにをみつけようとしたのだろう その視線の先でいま つばめが羽根をいっぱいにひろげている 私の識り得ない未来は ちいさな掌のなかに かわいらしく灯っている …

蘇生

かなしみはどこまでも深かった もがいても足がつかなくて 黙って沈んでいくしかなかった 生きた心地がしなかった だけど あなたの暖かい腕に包まれたあの日から 痛みはすこしずつ去った わたしはまだ生きている すくなくとも今は ふらつきながらもあなたの眼…

柊(ヒイラギ)

わたしは柊 すこしツンツンそっけないけど バラほどの刺はありません あなたのたいせつなボールが ここに転がってきて止まったから このごろとても上気分 入ってくるのは割合ラクでも 急いで取り出すには その手がすこし痛みます どうかゆるりと腰をおろして…

音楽の海岸

はじめにきこえたのは アニタオデイのSTRAWBERRY MOON あなたと出逢った月夜の海岸で さいごにきこえたのは リーコニッツのREBECCA あなたが背を向けた初夏の海岸で はじめに音楽があって おしまいにも音楽があった その間にも音楽はずっと流れつづけていた…

矛盾

悲しさから身を護るために眼をとじる ポツリポツリと つめたい水の音 ゆうべの電話は きみを困らせてしまったね 指先ほどの星屑が胸をつついてる 「わからない」という言葉の 心との矛盾 伝えてしまえたら どんなに楽だろう

花の名を

花に与えられた名は 花が望んだものではないのに それを受け入れて 嬉しそうに咲き誇っているようにも見える 朝顔 向日葵 夏椿... こちらの気持ちに応えて のびのびと わらっているようにも見える だから毎日笑顔で水をやり 感謝をこめて呼ぼう 私の心と…

濁流の果てに

明日を憂う願いなど 激しき濁流の藻屑と消え去れ すべてが過ぎた後 澄み渡る水面に君と見るものは 潔いまでの静寂と いちるの迷いもない 澱みなき未来

愛の尺度

愛の重さは不均等 ゆえにあなたと求めあう 愛の純度は不透明 ゆえにあなたと交ざりあう もしもそんなものを測れるとしたら その答えを識るまえに とめがねのない愛であなたを貫きたい

呼応

あなたと話しているときに また何かがごろんと 心の中に入ってきた気がした そういうときにいつも私はペンをとる あなたが砂と言えば 言葉は真っ白な砂となって両手に溢れ あなたが花と言えば それはかかえきれない花束となり あなたが星といえば それは幾千…